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『パレード』『悪人』『横道世之介』『怒り』など数多くの小説が映画化されてきたベストセラー作家、吉田修一と、多様なジャンルの話題作、問題作を世に送り出し、近年も『MOTHER マザー』『星の子』で絶賛を博した大森立嗣監督。モスクワ国際映画祭審査員特別賞ほか国内外で賞に輝いた『さよなら渓谷』以来、10年ぶりに両者のタッグが実現。炙り出される過去の”原罪”と、未来への光。その拮抗が終始、観る者の理性と感性を激しく揺さぶる、比類なきヒューマン・ミステリーが誕生した。

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介護施設での殺人事件を発端に、想像もつかない方向へとうねり出す物語は、重層的な構造と壮大なスケール感で観る者を圧倒する。一心不乱に真実を求めて貪り合う登場人物たちの姿は、闇夜の湖畔で艶めかしい“生”の輝きを放つ。その愚かさと愛おしさ、汚れとイノセンスの両面をまっすぐに見すえた本作は、観客に人間という存在の本質を問いかけるかのようだ。
この野心的な映画でダブル主演を務めたのは福士蒼汰と松本まりか。身も心も剥き出しでさらけ出す覚悟を要求される難役を渾身の演技で体現した。トラウマを引きずる刑事に扮した浅野忠信が、ただならぬ凄みに満ちた存在感を発揮。そして福地桃子、財前直見、土屋希乃、穂志もえか、三田佳子が、幾多の謎や罪に触れる“湖の女たち”を演じ、このうえなく濃密でスリリングなアンサンブルを披露している

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事件の捜査にあたった西湖署の若手刑事・圭介とベテランの伊佐美は、施設の中から容疑者を挙げ、執拗な取り調べを行なっていく。その陰で、圭介は取り調べで出会った介護士・佳代への歪んだ支配欲を抱いていく。
一方、事件を追う週刊誌記者・池田は、この殺人事件と署が隠蔽してきたある薬害事件に関係があることを突き止めていくが、捜査の先に浮かび上がったのは過去から隠蔽されてきた恐るべき真実・・・。それは、我々の想像を超えた過去の闇を引き摺り出すー。そして、後戻りできない欲望に目覚めてしまった、刑事の男と容疑者の女の行方とはー。

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福士蒼汰(濱中圭介)
1993年生まれ、東京都出身。2011年に俳優デビューして以来、数々のCM・ドラマ・映画などの映像作品を中心に活躍している。近年の主な出演作に、ドラマでは『星から来たあなた』(23/Prime Video)、『弁護士ソドム』(23/TX)など。『大奥』(24/NHK)では、シーズン1での好演が話題となり、シーズン2にて再登板を果たした。念願の海外作品デビューとなったドラマ『THE HEAD』Season2はHuluで配信中。そしてABCテレビ・テレビ朝日系にて2024年1月スタートの連続ドラマ『アイのない恋人たち』にて主演を務めている。また、2024年放送・配信予定のWOWOW『アクターズ・ショート・フィルムズ4』で、初監督作品を手掛ける。
松本まりか(豊田佳代)
1984年生まれ、東京都出身。2000年ドラマ「六番目の小夜子」(NHK)で俳優デビュー。2018年ドラマ「ホリデイラブ」(EX)で注目を集めた。近年の主な出演作にドラマでは「向こうの果て」(21/WOWOW)、「それでも愛を誓いますか?」(21/EX)、「名探偵ステイホームズ」(22/NTV)、「どうする家康」(23/NHK)、「家政夫のミタゾノ」(23/EX)など。映画では『雨に叫べば』(21/内田英治監督)、MIRRORLIAR FILMS Season2『The Little Star』(22/紀里谷和明監督)、『映画 妖怪シェアハウスー白馬の王子様じゃないん怪ー』(22/豊島圭介監督)、『ぜんぶ、ボクのせい』(22/松本優作監督)、『夜、鳥たちが啼く』(22/城定秀夫監督)、『耳をすませば』(22/平川雄一朗監督)、『アイスクリームフィーバー』(23/千原徹也監督)など多数出演。
福地桃子(池田由季)
1997年生まれ、東京都出身。2019年、NHK連続テレビ小説「なつぞら」に夕見子役で出演して話題となり、テレビドラマ「#リモラブ~普通の恋は邪道~」、「女子高生の無駄づかい」などに出演。近年の主な出演作に「鎌倉殿の13人」(22/NHK)、「消しゴムをくれた女子を好きになった。」(22/NTV)、「舞妓さんちのまかないさん」(23/Netflix)、「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(23/NHK)、映画では『あの日のオルガン』(19/平松恵美子監督)、『サバカン SABAKAN』(22/金沢知樹監督)など。2022年には主演映画『あの娘は知らない』が公開された。また2024年3月より公演予定の舞台「千と千尋の神隠し」に主人公・千尋役の1人として参加する。
財前直見(松本郁子)
1966年生まれ、大分県出身。1985年日本テレビ「婦警候補生物語」でドラマデビューし、映画では1989年の降旗康男監督『極道の妻(おんな)たち三代目姐』で初出演となる。以降多くのテレビドラマで活躍し、1995年TBSドラマ「ジューン・ブライド」で連続ドラマ初主演を務めた。主な出演作にドラマ「お水の花道」(99/CX)、「ごちそうさん」(13/NHK)、「おんな城主 直虎」(17/NHK)、「こっち向いてよ向井くん」(23/NTV)など。映画では『天と地と』(90/角川春樹監督)、『プロゴルファー織部金次郎』シリーズ(93~/武田鉄矢監督)『愛唄 約束のナクヒト』(19/川村泰祐監督)、『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』(19/野口照夫監督)、『サイレント・トーキョー』(20/波多野貴文監督)などがあり、女優として、シリアスからコメディーに至るまで幅広いジャンルでドラマ・映画に出演している。また2024年放送のNHK大河ドラマ『光る君へ』に出演。
三田佳子(市島松江)
1941年生まれ、大阪府出身。高校を卒業した1960年、東映に入社後すぐに若林栄二郎監督『殺られてたまるか』のヒロイン役で俳優デビュー。以後日本映画全盛期を代表するスター女優のひとりとして、東映在籍中60本以上の作品に出演した。1967年独立後、各社の映画、舞台、テレビ、出版等多分野に活動の場を広げ、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞・ブルーリボン賞主演女優賞・田中絹代賞・芸術祭賞等賞歴多数。また2013年には文化庁長官表彰、2014年には旭日小綬章、2016年には橋田賞特別賞を受賞。その間、2度にわたるNHK大河ドラマの主演「いのち」(86)、「花の乱」(94)や、1989年と1990年の紅白歌合戦の司会等も務めた。近年の主な出演作に『約束のネバーランド』(20/平川雄一朗監督)、『天間荘の三姉妹』(22/北村龍平監督)や、主演ドラマ「すぐ死ぬんだから」(20/NHKBSプレミアム)、ドラマ「プロミス・シンデレラ」(21/TBS)、ドラマ「ゆりあ先生の赤い糸」(23/テレビ朝日)などがある。2020年に芸能生活60周年となった。
浅野忠信(伊佐美佑)
1973年生まれ、神奈川県出身。1990年に松岡錠司監督の「バタアシ金魚」で映画初出演。以降、国内外の名だたる監督の作品に出演。主演作『MONGOL』(08/セルゲイ・ボドロフ監督)が第80回米アカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされ話題となる。『マイティ・ソー』(11/ケネス・ブラナー監督)でハリウッドデビュー。近年の主な作品に『私の男』(14/熊切和嘉監督)、『寄生獣 前後編』(14&15/山崎貴監督)、『岸辺の旅』(15/黒沢清監督)、『母と暮せば』(15/山田洋次監督)、『淵に立つ』(16/深田晃司監督)、『沈黙‐サイレンス‐』(17/マーティン・スコセッシ監督)、『幼な子われらに生まれ』(17/三島有紀子監督)、『アウトサイダー』(18/マーチン・サントフリート監督)、『パンク侍、斬られて候』(18/石井岳龍監督)、『ミッドウェイ』(20/ローランド・エメリッヒ監督)、『モータルコンバット』(21/サイモン・マッコイド監督)、『大名倒産』(23/前田哲監督)、『首』(23/北野武監督)など。公開待機作に『箱男』(石井岳龍監督)、『Ravens(原題)』(マーク・ギル監督)などがある。
近藤芳正(竹脇東)
1961年生まれ、愛知県出身。 1976年、テレビドラマ「中学生日記」出演をきっかけに、1981年に劇団青年座研究所に入所。近年の主な作品に『リバー、流れないでよ』(23/山口淳太監督)、『ナックルガール』(23/チャン監督)、『事実無根』(23/柳裕章監督)などがある。
平田満(河合勇人)
1953年生まれ、愛知県出身。1974年、劇団「つかこうへい事務所」の旗揚げに参加。その後は同劇団のほとんどの舞台に出演する 82年映画『蒲田行進曲』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞をはじめ数々の映画賞を受賞。近年の映画出演作品は、『蜜蜂と遠雷』(19/石川慶監督)、『Fukushima 50』(20/若松節朗監督)、『浅田家!』(20/中野量太監督)、『大河への道』(22/中西健二監督)、『ちひろさん』(23/今泉力哉監督)などがある。
根岸季衣(服部久美子)
1954年生まれ、東京都出身。1974年、舞台「ストリッパー物語」で鮮烈なデビューを飾る。黒澤明監督、大林宣彦監督作品を初め多くの映画監督から愛され、作品ごとの多彩な役どころで魅了。近年の主な作品に、『ミッドナイトスワン』(20/内田英治監督)、『スイートマイホーム』(23/齊藤工監督)、『家族』(23/澤寛監督)などがある。
菅原大吉(服部の夫)
1960年生まれ、宮城県出身。「ある晴れた自衛隊」シリーズ(94~99)をはじめ、「星屑の町」シリーズ(94~08)など水谷龍二作品の舞台に多く出演する。近年の主な作品に『Ribbon』(22/のん監督)、『ひみつのなっちゃん。』(23/田中和次朗監督)、『高野豆腐店の春』(23/三原光尋監督)、Prime Video『SEE HEAR LOVE〜見えなくても聞こえなくても愛している〜』(23/イ・ジェハン監督)などがある。
土屋希乃(服部三葉)
2008年生まれ、東京都出身。近年の主な作品に、映画『がんばれいわ!!ロボコン ウララ〜!恋する汁なしタンタンメン‼︎の巻』(20/石田秀範監督)、『愛を適量』(21/サトウユカ監督)、ドラマ「稲垣家の喪主」(17/WOWOW)、「浦安鉄筋家族」(20/TX)、「ちむどんどん」(22/NHK)などがある。
北香那(濱中華子)
1997年生まれ、東京都出身。2010年に女優デビュー。2017年、TVドラマ『バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』で注目を集める。2018年、アニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』で声優初主演。近年の主な作品、『バイプレイヤーズ〜もしも100人の名脇役が映画を作ったら』(21/松居大悟監督)、『なんのちゃんの第二次世界大戦』(21/河合健監督)、『春画先生』(23/塩田明彦監督)などがある。
大後寿々花(小野梓)
1993年生まれ、神奈川県出身。2000年、舞台「国盗り物語」でデビュー。 05年『北の零年』(行定勲監督)に出演したことがきっかけで映画『SAYURI』(ロブ・マーシャル監督)に出演。チャン・ツィイーが演じるヒロインの子供時代を演じ11歳でハリウッドデビューを果たす。 近年の主な作品に『桐島、部活やめるってよ』(12/吉田大八監督)、『鎌倉にて』(16/中田秀夫監督)、『“隠れビッチ”やってました。』(19/三木康一郎監督)、『幽霊はわがままな夢を見る』(23/グ・スーヨン監督)などがある。
川面千晶(二谷紀子)
1988年生まれ、兵庫県出身。『脚の生えたおたまじゃくし』(09/前野朋哉監督)でスクリーンデビュー。その後数多くのTVドラマ、映画に出演を重ねる。近年の主な作品に、『アースクエイクバード』(19/ウォッシュ・ウエストモアランド監督)、『騙し絵の牙』(21/吉田大八監督)、『レンタル×ファミリー』(23/阪本武仁監督)などがある。
呉城久美(本間佐知子)
大阪府出身、様々な作品に出演する若手実力派女優。2016年からNHK連続テレビ小説を立て続けに出演。「べっぴんさん」、「ひよっこ」(17)そして「まんぷく」(18)では主役を親友として支え続ける大きな役割を担う。近年の主な作品に「大病院占拠」(23/NTV)、映画『流浪の月』(22/李相日監督)、『エゴイスト』(23/松永大司監督)、『さよならほやマン』(23/庄司輝秋監督)などがある。
穂志もえか(市島松江)
1995年生まれ、千葉県出身。講談社主催オーディション・ミス iD2016でグランプリを受賞。「100万円の女たち」(17/テレビ東京)で連続ドラマデビューを果たす。近年の主な作品に、『窓辺にて』(22/今泉力哉監督)、『生きててごめんなさい』(23/山口健人監督)などがある。
奥野瑛太(市島民男)
1986年生まれ、北海道出身。日本大学芸術学部映画学科在学中、インディペンデント映画に出演。卒業後は舞台を中心に活躍し、2007年に旗揚げした劇団「赤堤ビンケ」の全公演に参加する。近年の主な作品に、劇場版『太陽の子』(21/黒崎博監督)、『グッバイ・クルエル・ワールド』(22/大森立嗣監督)、『ラーゲリより愛を込めて』(22/瀬々敬久監督)などがある。
吉岡睦雄(両角署長)
1976年生まれ、広島県出身。女優・演出家の前川麻子に師事。俳優の道へと進む。映画を中心に活躍し、近年の主な作品に、『ファンシー』(20/廣田正興監督)、『とんび』(22/瀬々敬久監督)、『こいびとのみつけかた』(23/前田弘二監督)、『花腐し』(23/荒井晴彦監督)などがある。
信太昌之(渡部編集長)
1964年生まれ、北海道出身。1986年、劇団日の出劇場創設に参加。旗揚げ公演「夜よ おれを叫びと逆毛で充たす 青春の夜よ」では主役を演じ、その後舞台、映画、ドラマに多数出演。近年の主な作品に、『シン・ゴジラ』(16/庵野秀明監督)、『キングダム』(19/佐藤信介監督)、『生理ちゃん』(19/品田俊介監督)、『夜を走る』(22/佐向大監督)などがある。
鈴木晋介(豊田浩二)
1957年生まれ、東京都出身。関根勤が座長を務めるカンコンキンシアターでは1986年の旗揚げから参加し、2008年第22回公演まで出演を続けた。近年の主な作品に、『老後の資金がありません!』(21/前田哲監督)、『グッバイ・クルエル・ワールド』(22/大森立嗣監督)、『季節のない街』(23/Disney +) などがある。
長尾卓磨(医療機器メーカーの担当者)
1981年生まれ、神奈川県出身。第61回ヴェネチア国際映画祭招待作品『ヴィタール』(04/塚本晋也監督)でスクリーンデビュー。映画、TVドラマ、CMなどで幅広く活躍。近年の主な作品に、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22/NHK)、「潜入捜査官 松下洸平」(23/TVer)、『中村屋酒店の兄弟』(22/白磯大和監督)、『ハードボイルド・レシピ』(23/松浦本監督)、『悪は存在しない』(24/濱口竜介監督)などがある。
伊藤佳範(小林剛)
1980年生まれ、青森県出身。武蔵野美術大学を卒業後、様々なワークショップで演技を学ぶ。2008年に舞台への出演をスタートし、現在は映画を中心に活躍中。近年の主な作品に、『雨にゆれる女』(16/半野喜弘監督)、『グッバイ・クルエル・ワールド』(22/大森立嗣監督)、『ラーゲリより愛を込めて』(22/瀬々敬久監督)などがある。
岡本智礼(谷川)
1991年生まれ、兵庫県出身。現在所属するプロダクションの養成所を卒業後、『日日是好日』(18/大森立嗣監督)にてスクリーンデビューを果たす。近年の主な作品に、『半世界』(19/阪本順治監督)、『花と雨』(20/土屋貴史監督)、『ピストルライターの撃ち方』(23/眞田康平監督)などがある。
泉拓磨(徳竹会の若い男)
1992年生まれ、滋賀県出身。『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(20/中田秀夫監督)でスクリーンデビューを果たし、映画、TVドラマ、CMなどで幅広く活躍している。近年の主な作品に、『夜明けの夫婦』(22/山内ケンジ監督)、『マイマザーズアイズ』(23/串田壮史監督)、『春画先生』(23/塩田明彦監督)などがある。
荒巻全紀(ハバロフスク裁判の被告(声))
1980年生まれ、神奈川県出身。ドレスデン映画祭にて特別上映された短編映画『hard cold greenhouse』(06/小澤雅人監督)で主演としてスクリーンデビューを果たしている。近年の主な作品に、『菊とギロチン』(18/瀬々敬久監督)、『日日是好日』(18/大森立嗣監督)、『MOTHERマザー』(20/大森立嗣監督)などがある。

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福士蒼汰(濱中圭介)
1970年生まれ、東京都出身。父親は前衛舞踏家で俳優の麿赤児。弟は俳優の大森南朋。大学時代から8ミリ映画を制作し、俳優としても活動。2001年、プロデュースと出演を兼ねた奥原浩志監督作『波』が第31回ロッテルダム映画祭最優秀アジア映画賞を受賞する。阪本順治監督作や井筒和幸監督作など、多数の映画に演出部として携わる。2005年、長編監督デビュー作「ゲルマニウムの夜」が国内外の映画祭で高い評価を受ける。本作の原作「湖の女たち」の吉田修一とは、2013年に第35回モスクワ国際映画祭で日本映画48年ぶりとなる審査員特別賞の快挙を始め、数々の国内賞を受賞した『さよなら渓谷』以来、10年ぶりに両者のタッグが実現。監督・脚本作品として『光』(17)、『日日是好日』(18)、『タロウのバカ』(19)、『MOTHER マザー』、『星の子』(20)などがある。また俳優としても『菊とギロチン』(18/瀬々敬久監督)、『ほかげ』(23/塚本晋也監督)などに出演し活躍する。
松本まりか(豊田佳代)
1968年生まれ、長崎県出身。1997年に『最後の息子』で文学界新人賞を受賞し、デビュー。2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞、『パーク・ライフ』で第127回芥川賞を受賞。同じ年に純文学と大衆小説の文学賞を合わせて受賞して話題に。07年『悪人』で第61回毎日出版文化賞・第34回大佛次郎賞を受賞。10年『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞を受賞。19年『国宝』で第69回芸術選奨文部科学大臣賞・第14回中央公論文芸賞を受賞。23年『ミス・サンシャイン』で第29回島清恋愛文学賞を受賞。作品は英語、仏語、中国語、韓国語などに翻訳され、世界で注目される。映像化された作品も多く、『東京湾景』『女たちは二度遊ぶ』『7月24日通り』『悪人』『横道世之介』『さよなら渓谷』『怒り』『楽園』『路』『太陽は動かない』などがある。2016年より芥川賞選考委員を務める。

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福士蒼汰

圭介は今まで経験したことのない役柄だったので、僕にとって非常に大きな挑戦であり、役者人生におけるターニングポイントと呼べる作品となったと自負しています。

原作や台本を読み込み、撮影に向けて準備を整えて臨みましたが、役者がすべきことは"その場の空気に身を置く"こと、思考を取っ払って感じるがままを表現することだと、改めて気付かされた現場でした。
大森監督が僕を原点に引き戻して下さったのだと感じています。

"わかりやすさ"や"意味"を求められることが多い昨今ですが、この作品では、人間の奥底で疼く何かを感じていただきたいです。言葉だけでは説明がつかない人間という生き物を、湖の絶景と共に受け止めていただけたらと思います。

松本まりか

大森立嗣という人はただひたすらに私を見つめ続けました。
何も語らず肯定し続けました。

私は認められ解き放たれ自由であることに戸惑いました。芝居は俳優はこうあるべきとか、誰かが決めてくれた常識を鵜呑みして従い縛られ生きることに安心感を覚えていること…なんならその不自由さを求めてすらいることに気がつきました。自分は何者なのか、何がしたいのか、何がしたくてここまできたのか、自分の中に何があるのか、何もない、持たない、結局何者でもないことを突き付けられ、焦り、限界を知り、静かに壊れてゆきました。

そこに至って私はようやく、自分を守る、偽るガードが崩れ、その隙から本当に美しいもの、その本質に一瞬、出会うことが出来たのです。

それは私であり佳代であり、自分と役を隔てるものはなかったように思います。

ラストシーン。
彩りを帯びてゆく空と湖、逆光の大森組が三位一体になった夜明け。
あんなにも美しい景色を見たのは初めてでした。
どうしようもなく此処で生きたいと思ってしまった。

「誰かを信じ切る」という監督の揺るぎない覚悟と共に、

あの強烈な映画体験は、生涯この身体から離れることはないでしょう。

浅野忠信

『湖の女たち』に出演できて本当に幸せです!
大森監督のどこまでも俳優を受け止めてくれる演出に甘えて好きなように演じさせていただきました。そしてとても魅力的な俳優の方々とも深いところでお芝居を楽しめた事は貴重な経験となりました。
是非映画館で楽しんでいただけたらと思います。

福地桃子

いくつかの場面で人は本心を吐き出すことで孤独や恐怖心から解放され体が軽くなる。こうした心の拠り所というのを気付かぬうちにずっと求めているんだと感じました。
私が演じた池田という人は真実を見つめ美しい光を求めて歩き続けていました。
これまで見てきた私が思う記者像というのとは少し違った感覚があり、学びが多くありました。

財前直見

人間の傲慢さ、欲望、儚さ、あやまちなど、どちらかといえばマイナスな部分をさらけ出し、湖がそのすべてをつつみこんで癒してくれる…そんな映画だと感じました。
大森監督と御一緒させていただいたのは初めてでしたが、自由にお芝居させていただき感謝しております。
刑事さんたちの執拗に追い詰める厳しい取り調べには、心が折れそうでしたが、それでも楽しい日々でした。
素晴らしい監督の演出と俳優さん達の演技、見応えある美しい景色と物語に、時間を忘れ魅了されてしまうと思います。

三田佳子

「90歳を越えたであろう老婦人」という思いもかけないオファーに少し戸惑いを感じた私ですが、原作が吉田修一氏、監督が大森立嗣さんであることを知り、後先を考えずに出演を決めてしまいました。
そして、この謎に満ちた老女もまた「湖の女」だったということが、演じる私にとって大きな魅力となりました。
福士蒼汰さん、松本まりかさん、浅野忠信さんと役で出会うことがなかったことが、ちょっぴり残念。
映画「湖の女たち」。熟成されたワインの様な大森監督の世界を、私も楽しみに味わいたいと思います。

監督:大森立嗣

吉田修一さんの『湖の女たち』と言う小説を読みました。この世のケガレと生の輝きが渦巻くようなものすごい小説でした。沸々とした気持ちを抑えられず、大きな挑戦でしたが映画にしたいと熱望し、なんとか完成までこぎつけました。福士蒼汰と松本まりかが主演です。二人は本当に素晴らしい演技をしています。今は心に響く映画になったのではないかと思っていますが、どのように伝わるか緊張の中にいます。どうか皆さまに届きますように。

原作:吉田修一

海は眺めるものだが、湖はこちらを見つめてくる。
本作を観終わって尚、ざわざわと落ち着かぬ心にそんな言葉が浮かんでくる。
映画を見ていたつもりが、気がつけばずっとその映画に見られていたような感覚だった。
劇中、不毛でアブノーマルな性愛に溺れていく男女を演じる福士蒼汰さんと松本まりかさんからも、その何かを問いかけるような凄みが強く伝わってくる。
二人が重ね合わせるのは体ではなく、互いの弱さである。互いが日常生活で抱えている服従心である。
では人はどのようなときに服従を選択するか。
自由を奪われたときである。
では自由とは何か。
それは恐怖心がないということだ。
とすれば、服従心というのは、恐怖心への対抗策であり、自由を希求する心であるとも言える。
暗い湖に落ちていくような二人の姿に、そんな根源的なことまで考えさせられた。
本作で描かれるのはグロテスクな事件であり、目を背けたくなるような人間の弱さである。しかしその人間の弱さこそが、物語を生み、歴史となっていくことを大森立嗣監督は伝えてくる。
そしてそれでも尚、ほんの少しの勇気によって世界が変わることを、あの涙が出るほど美しい湖の風景を通して観客にそっと教えてくれる。